画像引用:楽天市場
デザイナーズ家具についてあまり詳しくなくても、バタフライスツールは知っている方も多いのではないでしょうか。オブジェとして飾れるほど美しいのに極めて実用的なバタフライスツールは、日本を代表するデザイナー・柳宗理の代表作です。
本記事ではバタフライスツールの特徴やその魅力、価格帯、口コミ・評判、正規品(天童木工製)とリプロダクトの違いなどについて解説します。また、バタフライスツールに影響を与えたイームズの「LCW」や、同じ曲げ加工のスツール、チェアなども紹介します。
柳宗理のバタフライスツールはMoMA・ルーブルの永久収蔵品
バタフライスツールは、蝶(バタフライ)が羽を広げたような東洋的なフォルムと、成形合板技術を融合させた柳宗理のアイコン的プロダクトとして広く知られています。日本のみならず世界的な評価を受けており、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やルーブル美術館の所蔵品となっているほどです。
しかし、バタフライスツールは決してアート作品ではなく、日本の一般住宅における実用性を第一に考案された「用の美」のプロダクトです。
- 小さすぎず、大きすぎないサイズで和室・洋室どちらの空間にもなじみやすい
- 椅子としてだけでなく、サイドテーブル、台座、オットマンなどにマルチに使える
- 軽量なので掃除や模様替えのときにも片手で動かしやすい
- 適度な弾性と座面の広さがあり、見た目以上に座り心地が良い
上記のような優れた実用性を持つバタフライスツールは、1956年から現在まで生産を続けるロングセラーであり、多くの人に愛用されています。
柳宗理のバタフライスツールのサイズや価格
柳宗理のバタフライスツールの基本仕様と価格を以下に示します。
| サイズ | 幅 約42.5cm × 奥行 約31cm × 高さ 約38.7cm(座面高34.0cm) |
| 重量 | 約2.2kg |
| 素材 | メープルまたはローズウッドの成形合板+真鍮金具 |
| 仕上げ | ウレタン塗装 ※日常の手入れは乾拭きまたは固く絞った布拭き |
| 価格 | 5万7,200円程度 ※大きな値引きは少なく、実勢価格もメーカー価格と同程度 |
柳宗理のバタフライスツールは決して安くはありませんが、ヴェグナーやイームズといった他のデザイナー家具に比べると十分リーズナブルです。使い勝手もよいため、幅広い方が購入を検討できるでしょう。
柳宗理のバタフライスツールには専用クッションがある
柳宗理のバタフライスツールには専用クッションがあります。ふんわりした座り心地が好みの方や、木のひんやりした感じが苦手な方などにおすすめです。
| サイズ | 幅400 × 奥行300 × 高さ70 |
| 重量 | 約0.3kg |
| 材質(張地) | アクリル70%・ウール30% |
| カラー | レッド/グリーン |
| 参考価格 | 1万1,000円前後 |
この専用クッションのデザインについても、メーカーである天童木工の公式ページでデザイナーが柳宗理と明記されていることから、柳宗理または柳工業デザイン研究所によるデザインと考えられます。
柳宗理のバタフライスツールの魅力
柳宗理のバタフライスツールは、いわばプロダクト界の殿堂入り製品といえるでしょう。その魅力はどこにあるのでしょうか。
独創的な形
柳宗理の「バタフライスツール」は、その名のとおり“蝶”を連想させる独創的なフォルムで知られています。横から見ると、左右対称の二枚の成形合板が大きく反り返り、まさに蝶が羽を広げた瞬間のようなシルエットになります。
日本のデザイン解説では、この2枚の板がつくる曲線は、蝶の羽だけでなく、神社の鳥居や兜のようにも見える、と紹介されることもしばしばです。柳宗理自身も家具は住居と暮らしの条件に強く縛られるがゆえに地域性や民族性を帯びやすく、ユニバーサルデザインにはなりにくいといったことを述べています。
この観点でみれば、世界的な人気のあるバタフライスツールですが、やはり最もぴったりくるのは日本人の感性および日本家屋の雰囲気ともいえるでしょう。
使い方を選ばない
柳宗理のバタフライスツールはライフスタイルや住居に合わせた多様な使い方ができる点が魅力です。
【椅子として】
- 玄関で靴を脱ぎ履きするときの腰掛け
- 来客が多いときに、臨時のプラス1脚として
- 窓辺やベッドサイドに置いて、ちょっと座る場所にする
【サイドテーブル・オットマンとして】
- ソファの横に置いて、本やトレー、カップをのせるサイドテーブル
- 玄関先で荷物やバッグを一時的に置く場所
- ラウンジチェアの前に置いて、脚をのせるオットマン代わり
【ディスプレイ台・植物のベースとして】
- 花瓶やオブジェを置く台
- 観葉植物を少し高く見せるためのベース
【インテリアのピースとして】
- 何も置かない状態で、空間のアクセントとして
- アートやポスターの近くに置き、ギャラリーのような雰囲気づくりに
いろいろな使い方をイメージしてみてはいかがでしょうか。
座り心地の良さ
バタフライスツールは、成形合板を曲げてつくった2枚の「羽」を真鍮金具で留めたシンプルな構造です。座面は木そのものなのでクッションチェアのようなフカフカ感はありませんが、なだらかな曲面が太ももを面で支えるため、見た目よりも安定して腰掛けられます。
さらに、座面の両側の「羽」は、荷重をかけるとわずかにたわむ構造です。これが適度な弾力となり、座り心地の良さを実現しています。
座り心地の良さをさらに高めたい場合は、別売りの専用クッションを購入するとよいでしょう。
柳宗理のバタフライスツールの口コミ・評判
実際にバタフライスツールを購入した人たちは、どのような感想を持っているのでしょうか。Amazonや楽天、個人ブログなどでみられた代表的な口コミを要約してご紹介します。
【良い口コミ・評判】
- 部屋の片隅に置いて眺めているだけで幸せ
- 座るのがもったいないくらい、見ているだけで満足する美しい木工品
- 靴の脱ぎ履きにちょうどいい高さで、玄関に置いたら来客にも大好評
- とても軽くて気軽に移動できる
- 思ったより座面が広く、高さもちょうどよく、座り心地が良かった
- フカフカではないが、なだらかなカーブで意外と座りやすい
【悪い口コミ・評判】
- 長時間座るには向かない
- 板が合わさっている部分にホコリがたまりやすい
- 思ったより小さくて驚いた
- 届いてみると座面がやや大きく感じた
バタフライスツールと比較検討したい椅子
合板の曲げ加工技術に強い関心を持ったデザイナーは柳宗理だけではありません。ここでは、バタフライスツール考案のきっかけとなったイームズの「LCW」や、曲げ加工に取り組んだ日本のデザイナーのスツール、椅子を紹介します。
どれも比較的コンパクトで実用性が高く、かつ木材の美しさも際立っていますので、バタフライスツールとの比較候補にもなるでしょう。
イームズ「LCW」
LCWはチャールズ&レイ・イームズによるLounge Chair Woodの略称で、1945年頃に完成した成形合板ラウンジチェアです。背・座・脚を分割したパーツ構成と、ショックマウント(ゴム部材)で適度な弾性を持たせる考え方が特徴です。
イームズのLCWは、成形合板に3次元曲面を持たせることに初めて成功した画期的な椅子として、デザイン史に残る傑作といえるでしょう。小ぶりのサイズは日本の住宅とも相性良好です。先述したように、柳宗理がバタフライスツールを考案するきっかけの一つとなった椅子だと柳宗理自身が述べています。
ムライスツール
ムライスツールは天童木工が手がける成形合板の名作スツール。田辺(旧姓:村井)麗子さんによる1961年のデザイン以来、ほぼ形を変えずに作り続けられているロングセラーです。発表後はヨーロッパで評判となり、1967年にはニューヨーク近代美術館 (MoMA) の永久収蔵品に選定されました。
ムライスツールは、同形状の成形合板パーツ3枚を組み合わせた構造で、シンプルで合理的な発想が魅力です。どの面を下にしても上面が水平になるよう設計され、置き方の自由度が高いのが特徴です。開口部があるため、外側だけでなく内側の木目の見せ方まで緻密に計算して素材選定が行われています。
マッシュルームスツール
マッシュルームスツールは、山中康廣さん・曽原厚之助さん・山中阿美子さんによってデザインされた「木を曲げる=成形合板」の魅力を存分に味わえるスツール。3枚の成形合板をねじった形がマッシュルームの形のようであることが名称の由来です。マッシュルームスツールは、天童木工の高度な成形合板技術が生む、彫刻的で軽やかなスツールとして知られています。
マッシュルームスツールは、1961年発表当時は技術的課題があったため、なんと約40年を経た2003年にようやく製品化されました。2009年にはパリ装飾美術館での展示をきっかけにパーマネントコレクションに選ばれ、天童木工の世界的名作の一つとして位置づけられています。
折り鶴チェア(ORIZURU)
折り鶴チェア(ORIZURU)は、KEN OKUYAMA DESIGN(奥山清行さん)がデザインし、天童木工が製造した成形合板のチェアです。木を折り紙のように立体的に折り上げた造形が特徴で、シンプルながらも変化に富み、どこから見ても美しいチェアです。
ダイニングに置いても、ラウンジに一脚だけ置いても成立する存在感があるため、オブジェ的な役割も果たすでしょう。権威あるドイツの国際的デザイン賞である「red dot design award 2010」では「best of the best」賞を受賞しています。
柳宗理のバタフライスツールの誕生ストーリー
戦後まもない頃、柳宗理は政府の国策として近代デザインの先進国アメリカに渡ります。そこで大家チャールズ・イームズを訪ねた際、アメリカの負傷兵用に製作した、合板を曲げ加工した足カバーを見て興味を持ったといいます。そして後年、イームズが代表作となる「LCW」を発表したとき、心から驚嘆したということです。
刺激を受けて帰国した柳宗理でしたが、合板の曲げ加工で何が作れるのか、イメージが一向に固まりません。それから2~3年もの間、柳宗理は椅子を作るとも考えずにビニールシートを曲げては作ることを繰り返したといいます。そうした中で生まれたのが、あのバタフライスツールの形だったのです。
ところが、あまりに独創的なフォルムであったため製作してくれるメーカーが現れません。とはいえ、せっかく試作したのだからとトリエンナーレ(イタリアの有名なデザイン展)に出展。これがゴールドメダルに輝きます。
この実績により、天童木工が製作に名乗りを上げ、その高い技術で量産を実現して現在に至ります。後年、柳宗理は「僕はいいデザインをたくさんしたが、変なものしかよく売れない」といったことを冗談で述べていますが、おそらくバタフライスツールはそのヒット作の一つなのでしょう。
出典:柳宗理(2008).柳 宗理 エッセイ
バタフライスツールを製作する天童木工のすごさ

株式会社 天童木工は、山形県天童市に本拠地のある日本を代表する木工加工のプロ集団です。柳宗理以外にも、剣持勇、丹下健三、ブルーノ・マットソンなどの著名なプロダクトデザイナーと多数協働してきました。
バタフライスツールは、厚さ約1mmの単板を木目が交差するように7枚重ねて接着して作られますが、この1mmの単板を作るのも高度な技術が必要とされています。さらに曲げ加工では、一般的な木型ではなく金型を初期モデルから一貫して使用。これにより曲げのプレス時に均等に熱が伝わり、仕上がりがきれいになるそうです。
柳宗理は常々、デザイナーという職業は技術者、職人なしに成立しないと述べていますが、天童木工は最良のパートナーの一つ。柳宗理はバタフライスツールの図面を渡した後も天童木工の技術者のフィードバックを受けながら、その完成度を高めていったといいます。
2008年、柳宗理は立体商標としてバタフライスツールを登録し、リプロダクト(ジェネリック製品)の製造に制限をかけています。天童木工の製作するような質の高いバタフライスツールでなければ、納得できない部分が大きかったのではないでしょうか。
参考:MAGAZINE HOUSE(2008).BRUTUS Casa 柳宗理
参考:柳宗理(2008).柳 宗理 エッセイ
柳宗理のバタフライスツールは不朽の名作!
柳宗理のバタフライスツールは、不朽の名作と呼ぶにふさわしい一脚。蝶を思わせる美しい曲線と成形合板の軽さ・強さが両立し、椅子としてはもちろん玄関の腰掛けやサイドテーブル、オットマンなどにもなるマルチさが魅力です。
流行に左右されない本物のスツールをお探しの方にとって、きっと長く愛用できる逸品となるでしょう。リプロダクトも販売されていますが、高い技術を持つ天童木工の正規品の購入をおすすめいたします。
バタフライスツールについてのよくある質問
ここでは、バタフライスツールについてよくある質問にお答えします。
正規品とリプロダクト(ジェネリック製品)は何が違うの?
バタフライスツールの場合、正規品=天童木工の「バタフライスツール S-0521」を指すのが基本です。
一方、リプロダクトと呼ばれるものの多くは、一般に「ジェネリック製品」として流通する同型風デザインの製品を意味します。ジェネリック製品は中国製、イタリア製など複数販売されていますが、細部形状・材料・加工・仕上げがメーカーごとに異なります。
ジェネリック製品は「優れたデザインを手にとりやすい価格で提供する」という目的で作られるため、耐久性、細部の仕上げなどが正規品よりも劣っている可能性がある点にご注意ください。
バタフライスツールは椅子なのでしょうか?
基本的には椅子ですが、多様な使い方ができます。
スツールとは、背もたれや肘掛けが基本的にない1人用の簡易な椅子のことです。バタフライスツールも見かけ以上に座りやすい椅子として評判が高い椅子です。
しかし、バタフライスツールは、使う人の暮らしに合わせてサイドテーブルや飾り台、オットマンなどとしても使えます。軽量で移動も簡単ですので、いろいろな使い方を考えられるでしょう。
ヴィンテージの価値は高いのか?
希少価値が出て高額で取引されているバタフライスツールも存在します。
バタフライスツールの製造は天童木工により1956年から続いています。初期には畳向けの脚裏が平らなタイプもあり、こうした初期モデルが「ヴィンテージ」として流通しています。特にブラジリアンローズウッド材のバタフライスツールは流通量が少なく、希少価値が出やすいモデルです。
一方、現行のモデルは安定供給されていることに加え、人気商品であるため流通量も多いため、中古価格も落ち着いています。メルカリやYahoo!オークションなどでは、年数を経たものやコンディションが良好なものであっても比較的安い値段で購入できます。
結婚祝いに人気というのは本当ですか?
バタフライスツールは、同じ形の成形合板を2枚向かい合わせにし、真鍮の金具で固定した構造です。この構造が2人で肩を寄せ合うようなシルエットに見えることから、新婚カップルにぴったりの象徴的なアイテムとして人気があります。
さらにバタフライスツールは、「さまざまなインテリアスタイルになじむ」「コンパクトで場所をとらない」「スツール・サイドテーブル・花台などマルチに使える」などの特徴があり、万人に喜ばれやすい、失敗の少ない贈り物ともいえます。

